◆ 妖怪ウォッチが「かつてない難局」を迎えた理由
~ガンダムも陥った「多様な世代」を狙う難しさ
かつては「第2のポケモンになる」とまで言われた「妖怪ウォッチ」の元気がない。
グッズ販売はふるわず、専門ショップは今年2月にすべて閉店した(オンラインショップのみ継続)。
さらに、3月に最終回を迎えたアニメ「妖怪ウォッチ シャドウサイド」(テレビ東京系列・2018~2019年)の視聴率も低迷。
ビデオリサーチ社の調査によると、シリーズ1作目となる「妖怪ウォッチ」(2014~2018年)が夕方のアニメ枠としては異例の5%台を記録したのに対し、次作のシャドウサイドは2%前後。
1月13日の放送以降も3%を超えることはかった。
いったい何が原因だったのだろうか??
その原因を解説するために、まずは同作品の歴史を簡単に振り返りたい。
(中略)
■ 「ガンダム」シリーズでも陥った失敗
キャラクターとファンの年齢をめぐるビジネス展開の難しさは、妖怪ウォッチにはじまったものではない。
今年40年の節目を迎えたガンダムシリーズも、1979年の「機動戦士ガンダム」放送終了後に訪れたブームののち、シリーズ展開がうまくいかない時代が続いた。
本格的な「復権」は放送局を変え、「宇宙世紀」という時間軸(世界観)から脱却した「機動戦士ガンダムSEED」(2002年)だ。
クリエーターを一新し、主要キャラクターを美少年で固め、新たに女性ファンからの強い人気を獲得した本作を起点に、ガンダムは古くからのファンや子どもたちなどに向けた複数の作品を多面展開するに至っている。
実はこの多面展開の端緒に、妖怪ウォッチの原案・原作ゲームを手がけるレベルファイブ代表の日野晃博氏も関わった作品がある。
それが「機動戦士ガンダムAGE」(2011年)だ。
「機動戦士ガンダムAGE」でも、主人公の幼年期、青年期、そして老年期が描かれ3世代にわたる戦いの歴史が描かれている。
一見、こうした多様な世代を物語で描くことは、「ファンが年を重ねる」ことに対する対応策として有効に見えるかもしれない。
しかし、年齢によって物語に求める面白さや感じ取る魅力は異なる。
結果として「ガンダムAGE」は、シリーズの中でも、とくに低い視聴率を記録して幕を閉じている。
そうした失敗を経験したせいか、現在のガンダムシリーズは「機動戦士ガンダム」をリアルタイムで楽しんだ40代以上も楽しめる重厚なシナリオを持つ作品として、小説家の福井晴敏氏が原作を手がける『ガンダムUC』『ガンダムNT(ナラティブ)』が公開された。
同時に子ども向けにはロボット(モビルスーツ)で遊ぶ楽しさを訴求する『ガンダムビルドファイターズ』、“ファーストガンダム生みの親”である富野由悠季氏の独特の世界観を表現した『閃光のハサウェイ』『Gのレコンギスタ』など、隙のない展開が進んでいる。
ターゲットユーザーごとにそれぞれ訴求ポイントを設定した作品を、異なるクリエーターによって企画・制作し、それぞれに応じた映像ウィンドウ(テレビ・劇場・インターネットなど)と、回収手段(映像・ゲーム・グッズなど)の最適解を追求していることがその展開からも見えてくる。
■ 「原作者のこだわり」が足かせか
これに対して、妖怪ウォッチはその原作となるゲームから一貫して日野晃博氏が企画・制作に携わっている。
筆者が日野氏に行ったインタビューでも、アニメ放送に際し、脚本はもちろん絵コンテまで氏がすべて目を通していると聞いて驚いたことがある。
「レイトン教授」「イナズマイレブン」「ダンボール戦機」といった子ども向け大人気IP(知的財産)を次々と生み出したカリスマである氏ならではのこだわりとも言えるが、そのこだわりがキャラクターが創造主の手を離れて、さらに広い市場に広がる際の足かせとはなっていないだろうか。
天才ゲームクリエーター田尻智氏が生みだした「ポケモン」も初期のアニメ化に際して、制作陣は脚本家の首藤剛志氏に「何でも書かせてみる」姿勢で臨んでいたという。
4月5日から始まったシリーズ第3作「妖怪ウォッチ!」は、改めて第1作の小学生の主人公ケータが活躍するギャグタッチのアニメとなる。
上述のように、立ち上がりのグッズの供給不足やポケモンGOの大ヒットという「不運」はあったものの、コンテンツの魅力やビジネスのポテンシャルは非常に高いはず。
原点回帰する新シリーズから妖怪ウォッチの復活なるか、注目したい。
まつもとあつし : ジャーナリスト・コンテンツプロデューサー
※記事を一部引用しました。全文はソースでご覧下さい。
東洋経済オンライン 2019/04/10 5:40
https://toyokeizai.net/articles/-/275703
~ガンダムも陥った「多様な世代」を狙う難しさ
かつては「第2のポケモンになる」とまで言われた「妖怪ウォッチ」の元気がない。
グッズ販売はふるわず、専門ショップは今年2月にすべて閉店した(オンラインショップのみ継続)。
さらに、3月に最終回を迎えたアニメ「妖怪ウォッチ シャドウサイド」(テレビ東京系列・2018~2019年)の視聴率も低迷。
ビデオリサーチ社の調査によると、シリーズ1作目となる「妖怪ウォッチ」(2014~2018年)が夕方のアニメ枠としては異例の5%台を記録したのに対し、次作のシャドウサイドは2%前後。
1月13日の放送以降も3%を超えることはかった。
いったい何が原因だったのだろうか??
その原因を解説するために、まずは同作品の歴史を簡単に振り返りたい。
(中略)
■ 「ガンダム」シリーズでも陥った失敗
キャラクターとファンの年齢をめぐるビジネス展開の難しさは、妖怪ウォッチにはじまったものではない。
今年40年の節目を迎えたガンダムシリーズも、1979年の「機動戦士ガンダム」放送終了後に訪れたブームののち、シリーズ展開がうまくいかない時代が続いた。
本格的な「復権」は放送局を変え、「宇宙世紀」という時間軸(世界観)から脱却した「機動戦士ガンダムSEED」(2002年)だ。
クリエーターを一新し、主要キャラクターを美少年で固め、新たに女性ファンからの強い人気を獲得した本作を起点に、ガンダムは古くからのファンや子どもたちなどに向けた複数の作品を多面展開するに至っている。
実はこの多面展開の端緒に、妖怪ウォッチの原案・原作ゲームを手がけるレベルファイブ代表の日野晃博氏も関わった作品がある。
それが「機動戦士ガンダムAGE」(2011年)だ。
「機動戦士ガンダムAGE」でも、主人公の幼年期、青年期、そして老年期が描かれ3世代にわたる戦いの歴史が描かれている。
一見、こうした多様な世代を物語で描くことは、「ファンが年を重ねる」ことに対する対応策として有効に見えるかもしれない。
しかし、年齢によって物語に求める面白さや感じ取る魅力は異なる。
結果として「ガンダムAGE」は、シリーズの中でも、とくに低い視聴率を記録して幕を閉じている。
そうした失敗を経験したせいか、現在のガンダムシリーズは「機動戦士ガンダム」をリアルタイムで楽しんだ40代以上も楽しめる重厚なシナリオを持つ作品として、小説家の福井晴敏氏が原作を手がける『ガンダムUC』『ガンダムNT(ナラティブ)』が公開された。
同時に子ども向けにはロボット(モビルスーツ)で遊ぶ楽しさを訴求する『ガンダムビルドファイターズ』、“ファーストガンダム生みの親”である富野由悠季氏の独特の世界観を表現した『閃光のハサウェイ』『Gのレコンギスタ』など、隙のない展開が進んでいる。
ターゲットユーザーごとにそれぞれ訴求ポイントを設定した作品を、異なるクリエーターによって企画・制作し、それぞれに応じた映像ウィンドウ(テレビ・劇場・インターネットなど)と、回収手段(映像・ゲーム・グッズなど)の最適解を追求していることがその展開からも見えてくる。
■ 「原作者のこだわり」が足かせか
これに対して、妖怪ウォッチはその原作となるゲームから一貫して日野晃博氏が企画・制作に携わっている。
筆者が日野氏に行ったインタビューでも、アニメ放送に際し、脚本はもちろん絵コンテまで氏がすべて目を通していると聞いて驚いたことがある。
「レイトン教授」「イナズマイレブン」「ダンボール戦機」といった子ども向け大人気IP(知的財産)を次々と生み出したカリスマである氏ならではのこだわりとも言えるが、そのこだわりがキャラクターが創造主の手を離れて、さらに広い市場に広がる際の足かせとはなっていないだろうか。
天才ゲームクリエーター田尻智氏が生みだした「ポケモン」も初期のアニメ化に際して、制作陣は脚本家の首藤剛志氏に「何でも書かせてみる」姿勢で臨んでいたという。
4月5日から始まったシリーズ第3作「妖怪ウォッチ!」は、改めて第1作の小学生の主人公ケータが活躍するギャグタッチのアニメとなる。
上述のように、立ち上がりのグッズの供給不足やポケモンGOの大ヒットという「不運」はあったものの、コンテンツの魅力やビジネスのポテンシャルは非常に高いはず。
原点回帰する新シリーズから妖怪ウォッチの復活なるか、注目したい。
まつもとあつし : ジャーナリスト・コンテンツプロデューサー
※記事を一部引用しました。全文はソースでご覧下さい。
東洋経済オンライン 2019/04/10 5:40
https://toyokeizai.net/articles/-/275703