https://mainichi.jp/articles/20210625/k00/00m/040/408000c
毎日新聞 2021/6/25 21:05(最終更新 6/25 22:19) 1195文字
「表現の不自由展かんさい」の開催が予定されていたエル・おおさか=大阪市中央区で2021年6月25日、藤井達也撮影
大阪市で7月に開催される予定だった企画展「表現の不自由展かんさい」について、会場となる大阪府立施設の指定管理者が使用許可を25日付で取り消したことが判明した。開催が明らかになった6月中旬以降、施設への抗議活動が相次ぎ、利用者の安全が保証できないと判断したという。府は指定管理者から事前に相談を受け、許可取り消しを容認した。
「表現の不自由展かんさい」は7月16〜18日、大阪市中央区の大阪府立労働センター(エル・おおさか)で開催される予定だった。愛知県で2019年にあった国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」で開かれた企画展「表現の不自由展・その後」の作品の一部を展示する予定で、有志による実行委員会が準備を進めていた。
企画展「表現の不自由展かんさい」の開催準備を進めていた実行委員会の有志は施設の使用許可取り消しについて「とても納得できない。法的措置も検討する」と反発した。引き続き開催に向けて交渉を続けるという。
許可が取り消されたことを受け、実行委のメンバー数人が会場として予定していた大阪府立労働センターに出向き、判断の理由について指定管理者に説明を求めた。管理者側は、街宣車などでの抗議が行われたとして「通常業務に支障が出る」と繰り返したという。
実行委員の一人は取材に「作品を見る機会が失われてしまうのは残念で理不尽だ。圧力をかければ中止させられるという前例を作ってはいけない」と語った。【宮川佐知子】
利用させる義務、行政に
植松健一・立命館大教授(憲法) 地方自治法では公の施設の利用は正当な理由がない限り拒んではならないと定められている。表現の自由を保障するため最大限利用させる義務を行政側は負う。指定管理者の使用許可取り消しは行政の判断と同列ととらえるべきで、府にはまず警備体制の強化などに努める責任がある。抗議だけで許可を取り消してしまえば、クレームをつけるだけで表現の自由を封殺できることになり非常に問題だ。
違法となる恐れ
木下智史・関西大大学院教授(憲法) 指定管理者や大阪府が、表現活動を抑圧しようとする抗議者の動きに間接的に手を貸したことになる。あいちトリエンナーレの場合、ガソリン携行缶を持っていくというようなファクスが送りつけられるなどした。警察でも防げない暴力的襲撃がありうるのかどうかを見極めるなど、段取りを踏んだ上での許可取り消しでないと違法となる恐れがある。
恥ずべき行為
曽我部真裕・京都大教授(憲法) 府立施設の使用許可を取り消すなら、大阪府には、警察への相談や警備員の配置など一定の対応をとっても物理的な危険が防げないのか確認する責任がある。そもそも、暴力的な抗議によって表現活動や表現を享受する自由を妨げようとするのは、恥ずべき行為だ。府として、このような妨害行為は許されない卑劣な行為であるというメッセージを出すべきだ。
毎日新聞 2021/6/25 21:05(最終更新 6/25 22:19) 1195文字
「表現の不自由展かんさい」の開催が予定されていたエル・おおさか=大阪市中央区で2021年6月25日、藤井達也撮影
大阪市で7月に開催される予定だった企画展「表現の不自由展かんさい」について、会場となる大阪府立施設の指定管理者が使用許可を25日付で取り消したことが判明した。開催が明らかになった6月中旬以降、施設への抗議活動が相次ぎ、利用者の安全が保証できないと判断したという。府は指定管理者から事前に相談を受け、許可取り消しを容認した。
「表現の不自由展かんさい」は7月16〜18日、大阪市中央区の大阪府立労働センター(エル・おおさか)で開催される予定だった。愛知県で2019年にあった国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」で開かれた企画展「表現の不自由展・その後」の作品の一部を展示する予定で、有志による実行委員会が準備を進めていた。
企画展「表現の不自由展かんさい」の開催準備を進めていた実行委員会の有志は施設の使用許可取り消しについて「とても納得できない。法的措置も検討する」と反発した。引き続き開催に向けて交渉を続けるという。
許可が取り消されたことを受け、実行委のメンバー数人が会場として予定していた大阪府立労働センターに出向き、判断の理由について指定管理者に説明を求めた。管理者側は、街宣車などでの抗議が行われたとして「通常業務に支障が出る」と繰り返したという。
実行委員の一人は取材に「作品を見る機会が失われてしまうのは残念で理不尽だ。圧力をかければ中止させられるという前例を作ってはいけない」と語った。【宮川佐知子】
利用させる義務、行政に
植松健一・立命館大教授(憲法) 地方自治法では公の施設の利用は正当な理由がない限り拒んではならないと定められている。表現の自由を保障するため最大限利用させる義務を行政側は負う。指定管理者の使用許可取り消しは行政の判断と同列ととらえるべきで、府にはまず警備体制の強化などに努める責任がある。抗議だけで許可を取り消してしまえば、クレームをつけるだけで表現の自由を封殺できることになり非常に問題だ。
違法となる恐れ
木下智史・関西大大学院教授(憲法) 指定管理者や大阪府が、表現活動を抑圧しようとする抗議者の動きに間接的に手を貸したことになる。あいちトリエンナーレの場合、ガソリン携行缶を持っていくというようなファクスが送りつけられるなどした。警察でも防げない暴力的襲撃がありうるのかどうかを見極めるなど、段取りを踏んだ上での許可取り消しでないと違法となる恐れがある。
恥ずべき行為
曽我部真裕・京都大教授(憲法) 府立施設の使用許可を取り消すなら、大阪府には、警察への相談や警備員の配置など一定の対応をとっても物理的な危険が防げないのか確認する責任がある。そもそも、暴力的な抗議によって表現活動や表現を享受する自由を妨げようとするのは、恥ずべき行為だ。府として、このような妨害行為は許されない卑劣な行為であるというメッセージを出すべきだ。