
新たなコロナ対策について会見した小池百合子都知事
安倍晋三首相は23日の参院予算委員会で、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、東京五輪の開催延期を容認する考えを初めて表明した。
延期も含め、4週間以内に結論を出すとした国際オリンピック委員会(IOC)の対応を受けたもの。「今、大会を開けるかといえば、世界はそういう状態ではない」とも述べた。日本の五輪戦略は完全な練り直しを迫られることになり、首相や東京都の小池百合子知事は、自身の考えをバッハIOC会長に直訴する構えを示した。
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首相は「『完全な形での実施』が困難な場合、アスリートの皆さんのことを第一に考え、延期せざるを得ない」と、延期を容認する考えを初めて示した。「五輪を今、開けるかと言えば、世界はそういう状態ではない」と認め、「4週間、IOCに議論いただく中、一定の方向性が示されると期待している」と述べた。
14日の会見で「無事予定通り開催したい」と述べたが、16日のG7首脳とのテレビ電話会議で「完全な形で実現」と、微妙に修正。この日は「世界からしっかり参加していただける形で開催したい。中止は選択肢にない」と、強調した。
開催都市東京のトップ、小池知事も会見で「私もそのとおりと考えている。『完全な形で実現』という総理の発言が、1つの突破口となったのではないか」と、首相方針を評価した。
延期の流れが不可避となれば、新たな課題も出てくる。すべての決定権はIOCにあるため、首相も小池氏も同様に、自身の考えをバッハ氏に「直訴」する意向を示した。首相は「私自身の考え方を、話す機会があれば」と述べたが、昨年、マラソン会場を突然札幌に変更された小池氏は、強い調子で語った。「ボランティアはどうするのか。(大会後に分譲マンションとなる)選手村の権利者は販売業者と契約者だが、今後の東京都の街づくりにも関わること。さまざまな課題について東京都の考えを申し述べる必要がある。突然、札幌と言われるようなことがないよう、しっかり連携させていただく」。
もし延期なら、2人の「今後」にも影響する。来年9月に自民党総裁の任期を迎える首相は、大会後の今秋以降、衆院解散総選挙に踏み切るとみられたが、機運はしぼみつつある。延期幅が長引けば、総裁任期延長がない限り、首相として大会に臨むことは難しい。
一方、小池氏は今年7月に都知事1期目の任期を迎えるが、再選出馬は確実。対立する自民党や野党は対抗馬擁立を模索するが「混乱時に知事を替える必要があるのか」との声は、自民党内にも出始めている。
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